太田哲三窯に行きました

7月の豪雨災害から3ヶ月経ち、小石原と小鹿田がどのような状況なのか?実際の話を聞きたいと思い、福岡県朝倉市にある太田哲三窯を訪ねました。

直売所には以前と同様たくさんの器が並んでおり、哲三さんとご家族もお元気そうで安心しました。

災害当時について太田圭さんに伺ったところ、水は流れ込んできたものの特に大きい被害はなかったそうです。ただ、小石原付近の道路はまだ完全に復旧していないため、生活が元通りになるにはまだまだ時間がかかるとのこと。災害当日はお子さんたちが学校に泊まったと聞いて、どれほど心配だっただろうと思いました。

焼成前の器もたくさん並んでいます。

緋色に見えるものは一度素焼きされたものです。素焼きをしてから釉薬を掛けると発色が良く、安定して綺麗に焼けるそうです。moyaisで取り扱っているもののほとんどは素焼きをせず釉薬をそのまま掛ける「生掛け」のもの。一枚一枚に変化があり面白い上がりが多く見られます。

こちらが普段使われているガス窯。登り窯での焼成は年に2回程度だそうです。登り窯は火の当たり方や温度が一定ではなく、販売できないものの割合が高くなってしまうため、現在はほとんどの窯でガス窯が使われています。

器づくりに使われる様々な道具です。


飛び鉋を入れるときに使う道具は時計のゼンマイ部分を切って作られています。小鹿田のものとは異なり両端を切って丸みを出しているので、小石原の飛び鉋模様は線が短く優しい印象になります。

太田哲三窯の定番である櫛描き皿は、ゴムの長靴などから作った道具で模様が施されています。久野恵一さんは「哲ちゃんは四輪駆動車の厚い古タイヤのゴム片を利用してヘラを作っている」と言っていましたが、実はタイヤのゴムだと硬すぎて使っていないそうです(笑)。庶民のうつわを作る「民窯」である小石原焼。器作りに使われる道具も日常の生活用品を工夫して作られています。

名工であった圭さんの祖父・太田熊雄さんが引退まで使っていたという蹴ろくろ。現在は刷毛目を打つときに使っているそうですが、圭さんも始めたばかりの頃はこのろくろで修行されたそうです。

現在は窯の仕事をほとんど任されている圭さん。「窯の名前は太田圭窯にならないのですか?」と聞いてみたところ「作っているものは同じですから変える必要もないと思っています。」とおっしゃっていました。顔や名前を出さずとも、良い器を変わらずに作っていくことが大切であるという圭さんの姿勢が、まさに民藝の精神を現していると感じました。

今月は太田哲三窯の器が入荷する予定ですので、どうぞお楽しみに。

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