小石原焼太田哲三さん・圭さんの窯からほど近い場所にある、太田潤さんの手吹き硝子工房を訪ねました。
太田哲三さんの次男として生まれた潤さん。倉敷ガラスの小谷真三さんの職人としての姿勢に憧れていたこともあり、陶芸ではなくガラスの道を選びました。沖縄で5年ほど修行した後に小石原へ戻り、太田潤手吹き硝子工房として独立しました。
原料は再生ガラス。地元の酒屋さんなどからもらうガラス瓶を再利用して様々な色を出しています。
こちらがガラスを溶かす「るつぼ」です。るつぼの中のガラスの状態が良し悪しを決めるそうで、「今は調子がいいんです」とまるで生き物ののようにお話されていたのが印象的でした。るつぼはヒビが入って破損するとガラスが漏れてしまいます。早い時は1ヶ月で交換しなければならず、るつぼを確保することがとても重要なのだそうです。
小谷真三さんと同様、すべての工程を一人でこなすスタジオガラス。工房の設備はご自分で作ったのだそうです。
るつぼが入っている窯です。ここで原料のガラスを溶かします。
溶かしたガラスをひとつひとつ吹いて形を作ります。吹き竿にガラスをつけて宙で息を吹き込みます。
成形するための炉です。肌寒い日でしたが、工房は真夏のような暑さ。炉の前は50℃にもなるため、基本的に作業は気温の下がる夕方から行うそうです。
モールなどの模様をつけるための型もすべて手作り。だからこそ模様にも温もりがあるのですね。
作業自体はお一人でされていますが、それを支えているのはご家族の存在。奥様は潤さんの仕事を勉強し、理解し、尊敬し、影でしっかり支えていらっしゃいます。「潤さんの仕事は沖縄の修行時代や尊敬する小谷真三さんの影響も受けていますが、根底にあるのは哲三さん、熊雄さんのうつわです」という奥様の言葉が心に残りました。父親、祖父を尊敬し、受け継いだものを否定せずに感謝し、認めている心がものの美しさに繋がっているのだろうと感じました。
工房の隣にある展示場には美しいガラスの数々。潤さんは民藝や民俗学の本を読んだり、骨董品店をまわったりと昔のものも色々と研究されているそうです。常に好奇心を持ち、謙虚な姿勢で学び続ける太田家の皆さんは、まさに民藝の精神を体現するファミリー。
来年はmoyaisでも太田潤さんの手吹きガラスをご紹介できるかと思います。どうぞお楽しみに。