磁器の良さを知る・その2

日本を代表する磁器の産地として知られる佐賀県の有田。有田焼は大量の焼き物を海外に輸出した伊万里港の名を取って伊万里焼とも呼ばれます。有田焼の歴史は17世紀のはじめ、豊臣秀吉の時代にさかのぼります。

戦乱に明け暮れた武将たちの間で茶の湯が流行するなか、秀吉は高麗茶碗を作り出していた朝鮮半島に関心を深めました。佐賀藩主の鍋島直茂は朝鮮出兵からの撤退時に何千という朝鮮陶工たちを日本に連れて帰りました。その陶工たちは九州各地に窯を開きます。現在九州に残っている小代焼、小石原焼、龍門司焼など多くが朝鮮の流れを汲む窯です。朝鮮陶工の一人、李参平(りさんぺい)は、佐賀の多久にて陶器を焼いていましたが、なかなか納得のいくものが出来ず、磁器を作るための陶石を見つけるための旅に出ました。1616年に有田の泉山(いずみやま)で良質の磁石を発見したことから有田の窯業は急速に発展し始めました。その後も藩の庇護のもと生産が増えていき、18世紀には民衆の間でも磁器が使われるようになりました。

初期の有田焼は白い素地に藍色一色の模様が多かったのですが、その後、金彩をまじえた豪華絢爛な金襴手が生産されるようになり、赤、青、緑、金など多彩な焼き物として知られるようになっていきます。また、大手ブランドの参入などにより一大工業地となり本来の古伊万里の雰囲気を残す磁器はほとんど見られなくなりました。「手仕事の日本」のなかで柳宗悦は有田焼についてこのように述べています。

・・・・・
しかし現に作られている仕事を見ますと、残念にも四つの点で昔のものに劣るのを感じます。一つは形が弱くなり、昔のようなふくらかさや張りを失いました。一つは絵が段違いに拙くなって、活々したものがなくなりました。充分模様にこなされていないためとも思われます。一つは用いる色が俗に派手になって落着きを欠いてきました。これは天然の呉州が廃たれ化学的なコバルトがこれに代ったことが大きな原因でありましょう。一つは材料が人為に過ぎて骨を持たなくなりました。無理して白さを追ったり、また余りにも火度を上げたりすることも、味を奪う原因となったと思われます。別に技が下ったためではなく、むしろ醜いものを上手に作っていると評する方が早いでありましょう。そのため仕事が盛んであるにかかわらず、選び得るものが案外少いのは遺憾に思います。
・・・・・

柳の時代でもこのような状況ですから、現代どのような状況であるかは言わずもがなでしょう。美術品や陶芸作品としての磁器を作る窯がほとんどで、民藝の精神を受け継ぐ窯はほとんどありません。そのような中、大日窯は地元の土、自家製の釉薬を使って、手作業で作り続けている窯です。必要以上に精製せず、土の味わいを残しています。ところどころに小さな黒い点が見られるのはそのためです。

民藝とは昔のものでもなく、今のものでもない。日本の民衆の暮らしの流れの中で生まれ、今なお生きているものだと思います。必要な分だけをその土地の自然からいただき、つくる。江戸時代までの日本人が当たり前にしてきたことですが、大きな利益が出ることではないため、現代においては難しいこととなりました。日本の手わざがこんなにも世界で認められ、何百年も続いてきたのは、「もったいない」「ありがたい」「すまない」という日本の美しい精神があったからこそだと思います。そのような心の健やかさが見られる、素朴なやさしい磁器をmoyaisではこれからもご紹介していきたいと思います。

moyaisオンラインショップでは、2018年11月21日(水)~11月28日(水)の期間中、磁器(大日窯、中田窯、梅山窯)を商品代金1,000円以上お買い上げの方に2019年手仕事カレンダー・ポスター型、5,000円以上お買い上げの方には卓上型をひとつ進呈いたします。年末年始にも活躍する磁器をぜひこの機会にお求めください。

磁器(大日窯、中田窯、梅山窯)

磁器の良さを知る・その2” への3件のフィードバック

  1. 大日窯の丼が今日届きました。テーブルに置いて眺めています。気品がありますね。地元の土、自家製の釉薬、手作業なのですね。ブログを読ませていただき、ますます大切にしようと思いました。年越しそば、家族でこの丼鉢でいただきます。楽しみです。カレンダーもありがとうございます😊

    1. 丼、ありがとうございました。自分が使っている器がどんなものかを知ると嬉しくなりますね。美味しく年越しそばを食べていただけると思います。どうぞ良い年末年始をお過ごしください。 平野

    2. 丼、ありがとうございました。自分が使っている器がどんなものかを知ると嬉しくなりますね。美味しく年越しそばを食べていただけると思います。どうぞ良い年末をお過ごしください。 平野

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。