まことに美しいもの

毎日流れるように過ぎていく中で、自分はどこに向かっているのか、どこに向かうべきなのか、時々迷ってしまうときがあります。そんなとき、道標となる柳宗悦の言葉。

私達のすべてはこの世を美しくする任務があるのです。しかしどうしたら美の国を将来することができるか。よく倫理学者や経済学者は最大多数の最大幸福ということを説きますが、美の領域でもわずかな少数のものが美しくなっただけでは何もなりません。また特別な場合にのみ存在するものが美しくなったとて美の時代は来ないでしょう。それ故少量の特別な貴族品が栄えるより、数多くできる民藝品の隆盛が極めて重要な意味を齎(もたら)すわけです。
(中略)
この理想を充たすためには、特に人々の生活に、それも平常の生活に美を交えしめることが最も緊要なこととなります。」
(「美の国と民藝」より)

「今日の機械生産はさらに安く多く作るではないかと云われるかも知れません。しかしそれは元来用のために作られるよりも利のためでありますから、悲しいかな美と離れてくるのです。そこには多が美と一致する機縁がないのです。今のは多産というよりも濫造であり、廉価というよりも粗悪とこそ呼ばれねばなりません。」
(「民藝とは何か」より)

こういった文章を読むと改めて自分の使命が見えてきます。この世を美しくするというのは見た目のことだけではなく、人々の精神や社会の状態のことでもあります。民藝に携わる者でなくとも、美しいものを残すというのは大切な使命であると思います。その使命を果たせるかどうかは私たちひとりひとりが何を美しいと感じ、何を選ぶかにかかっています。子どもたちに美しい景色と暮らしを残すため、私も人と人とのつながりで美しい縦糸、横糸を紡いでいけたらと思います。

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